ちょっとだけ最初の方かわってます。
一時UPなんであとで消えます。
「も~仕事なんかやだあ…」
昨日も仕事今日も仕事、明日も仕事。
今日だけラジオの前番組がスペシャルだからお休みだけど、来週はまたあるし。
マネージャーが家まで送るというのを振り切って、ふらりと適当な駅に降りて、ナルトはとある居酒屋チェーン店に入った。
このうずまきナルトこと、新人アイドルNARUTOは疲れ切っていた。
ナルトは施設育ちの天涯孤独の身。中学卒業と共に働き始め、決して楽とはいえない生活だったがそれでも明るく元気に慎ましく暮らしていた。
そんな生活が一変したのは20歳になったある日のこと。
幼馴染のサクラに急に呼び出され、女子アイドルのオーディションに一緒に出てくれと言われたことが全ての始まりだった。
何故そのようなことを懇願されたかというと、幼馴染のサクラはナルトにとって実の姉のような存在で、ナルトは幼い頃からサクラの着せ替え人形のように女の子の格好を時折させられて、街に出て買い物に付き合ったこともある。
中学の時の文化祭でも当然のように女装で接客とかしたし、そんなわけで女の子のふりをすることは慣れていた。
だがらといって特別趣味なわけではなく、大好きなサクラが喜ぶからしていただけのことで、オーディションも単に一人で受けるのは心細いというサクラの強い押しに負けて、渋々承諾したに過ぎない。
ところが女装して受けたアイドルオーディションは、どういうわけか決勝まで勝ち進んでしまった。
もちろん途中何度も辞退する機会はあったが、早々に予選落ちしたサクラが「すごいすごい」と嬉しそうにナルトを誉めたたえ、楽しそうにナルトを着飾るのでズルズルとそこまできてしまった。
だが、決勝はTVで放映されるとのことで、さすがのナルトも恥にも良心にも限界が出て、スタッフに打ち明けた。
さぞ怒られるだろうという覚悟をしていたのだが、その前の面接などで生活の困窮さを正直に打ち明けたのが良かったのか悪かったのか……オーディションからは外されたものの改めてスカウトされた。
戸惑いがなかったわけではないが事務所の社長の熱い説得と「アイドルといっても必ずしも売れるわけじゃないし、とりあえず1年契約金弾むよ」という言葉にも少し惹かれ、女子アイドルとしてデビューし2年たった今はTOPアイドルとまではいかなくても、それなり固定FANも多い位置に落ち着いてしまった。
元々ナルトはたくさんの人と交流するのは好きな方だ。
だが、それはあくまで素の自分でいる時の話であって、女装、つまり女の子を演じながら自分の味を出すのは非常に疲れる。
まあそれも段々と慣れてきたわけだが、ナルトが女の子としての魅力を高めれば高めるほど、共演者のセクハラめいた発言やボディタッチなどが増え始めた。
女装はあくまで仕事であって性的にはノーマルなナルト。
男に言い寄られて嬉しいわけはない。
FANも圧倒的に男性が多いが、声援をもらって嬉しいのは女性FANだ。
これまでそのFANや、周囲のスタッフに支えられてきたナルトだが、今日の仕事は本当に嫌だった。
ある共演者にTVが映らない所で、執拗に性体験がどうとか聞かれたり今後の仕事の斡旋をしてやるから終わったら付き合えとか、本当に最低な奴だった。
他の女の子も耐えてるんだろうかと思うと、男である自分が凹んだりするのが情けないと思うが、度重なる過酷なスケジュールの中またあの男と会うこともあると思うと嫌だった。
明日の仕事は午後からだし、もう今夜はとことん飲んでやる!とナルトは決めた。
今日の俺はNARUTOじゃなくて、渦巻ナルト(男)だってばよ!
だが一人酒というのは思った以上に寂しく、意外に酔えないものだなとナルトは思い知った。
一応酔っている気分にはなれるが、ちっとも陽気にはなれない。
なんだよ、俺は酔うことすら自由になんねーのかよ。
そんな仕事の愚痴をブツブツ呟きながらふと横を見ると、一つ離れた席で、自分と同じように肩を落としているサラリーマンの姿が見えた。
「ああ…もう仕事なんか辞めてえ」
聞こえてきた声は、自分と同じようなことを言ってて、よく顔を見れば年頃も同じくらいで、ナルトは親近感がわいた。
思わず「にーちゃんもお仕事大変なんだってば?」と声をかけてしまった。
キッと睨まれ、ビクっとしたが「そうなんだ、お前もそう?」軽い口調で答えられて、睨まれたんじゃなくて単に目がすわっていただけなんだとわかった。
相手は普通のサラリーマンのようだが、自分と同じように職場の人間関係に悩んでいた。
しかも「ちょっと顔と頭がいいから」とやっかまれると悩んでいて、ナルトは「自分で言うか?」と思わず笑いながらつっこんだが、確かに顔はその辺のアイドルじゃ太刀打ちできないぐらいの美形だった。
艶やかな黒髪で、切れ長の黒眼は今風というより、由緒正しい日本男児、いわば侍のような強いオーラを感じる。
自信たっぷりで存在感があるし、低い声で話し方もいい。こういう奴が画面映えするっていうんだよな。
同じ年ということもあって初めて会ったとは思えないぐらいナルトは彼と打ちとけ、また彼もナルトといると徐々に笑みを浮かべるようになり、会話は面白いくらいに弾み、気がつけばナルトは終電を逃していた。
「その辺の漫喫にでも泊まる」と言ったナルトに対して、彼は自分ち近くだから泊めてやると言い、ナルトは少し迷ったがついていくことに。
だが彼の家の前に着いたとこで、彼はハッと何かに気がついたようにナルトを見た。
「何?」
「ちらかってる……ていうか、多少キモいだろうが泊めてやるんだから、我慢しろよ」
「何々~?ゴッキーでも出んの?俺んちも似たようなものだってばよ」
「清潔にはしてる。狭いから暴れるなよ」
「ん」
鍵を開けて、「先に入れ」と促され、「お邪魔します」と上がり込み、電気はどこだろうかと探していると後から入ってきたサスケがパチリとつけた。
明かりがついた部屋を見渡して、ナルトは絶句した。
それはワンルームだったからではない。
ゴミが散乱しているわけでもない(むしろ清潔そうに見える)
ただ非常に見覚えがあるものが部屋のあちこちに飾られていて、少し狭いというより目が痛かった。
壁には女装した自分、つまりNARUTOのポスターやカレンダーがドドンと貼られていた。
そして本棚には写真集、DVDが所狭しと収納されており、
TVやラックの上には、CD、1/10フィギュアまで飾られていた。
待て、フィギュアは発売してねえはずだぞ?非公式グッズか?にしては気持ち悪いぐらい秀逸な出来だってばよ。
固まってしまったナルトに、部屋の主はゴホンと気まずそうに咳をした。
「見ればわかるだろうが、俺はNARUTOが好きなんだ」
「………お、おう。俺も結構好きだってばよ?最近頑張ってるもんな。うん」
「彼女はずっと頑張ってる。俺はNARUTOがしるこドリンクCMやってる頃からのFANだ」
「そんな頃から!?」
それってば初めてのCMの仕事だってばよ!
「なんだ知ってんのか?あと初めてラジオでしゃべったのは、○月×日のキックザカンクロウの「イケてるじゃん?」コーナーのゲスト。あれでますます好きになった」
「へ…へえ…………」
あんなちょいコーナー聞いたやつ居るんだ。初期のころはあんまり女の子っぽい発言してないから突っ込まれたら困るんだけど。
「お前はいつからNARUTOが好きなんだ?」
「えっ!ええっとぉ~~~」
自分を好きか?なんて聞かれても困る。ただいつ仕事が楽しくなり始めたっていうと……。
「い、いぇす☆ほりでぃ…かな」
その歌を歌う少し前に売れ始め、加速をかけようという事務所の方針で振付が一層大変になった所だったが苦労した分自分でも充実感があった。
「なるほど。あれは一段となっちが輝き始めた所だからな」
「な、なっち!?」
「なるるもいいが、俺はなっち派だ」
「…………」
そりゃ一部ではそう呼ばれてるけど、できれば間近で、しかもこんな美形から残念なセリフ聞きたくなかったってばよ。
なっちって……。
「何か飲むか?ああ、そうだ。お前甘いもの好きか?」
「え?」
部屋の隅からごそごそビニール袋から、彼が取り出したのはナルトが大好きなチョコ菓子だった。
「これにさ、なっちのライヴチケットの抽選つきQRコードがついてるから集めてんだけど、俺食べられないから、兄貴が来た時にしか処理できないんだ。よかったら」
「ふおーっ!俺それ大好きだってばよ!CM依頼あってすげー嬉しかったってばよ」
もちろん出演の時に大量ももらったのだが、マネージャーに太るだろう!と叱られスタッフにわけてしまったらそう手元には数が残らなかったのだ。
「ああ、あのCMは代々ブレイクするアイドルしかやらねえもんな。なっちもついにそこまで来たかと」
「喰っていいの?」
「どんどん喰え。いや全部持って帰っていいぞ」
「さんきゅう!」
早速ひと箱封を開け、スティック状のそれをナルトはポリポリと口に含んだ。
「んまんま」
子供のようにむしゃむしゃと食べるナルトの様子が、微笑ましく思ったのか男はフッと笑った。
「お前ちょっとなっちに似てるな」
「んぐっ!!」
「あーいいなー………コスプレしてライブとかいったら目立って、なっちに見てもらえそうじゃん」
「は…はは」
見るも何も本人なんですが。
「チケット取れたら一緒に行くかね?」
「いいっいいっ……遠慮するってばっ!」
「そっかー、しかしお前初対面な気がしないな。お前も全然緊張しねえし…………あ、そだお前なんて名前?」
不意に名前を聞かれてナルトはギクッとした。
よく考えたら店からお互い名前も聞かずに、部屋まで来ていたんだった。
ナルトの背中がだらだらと汗が流れる。
「え…………えっとえっと………渦巻……な、」
「な?」
「な………と…ミナトだってばよ!」
「そうか、俺は団扇サスケだ」
「うえ!?」
「なんだよ?やっぱどっかで会ったか?」
「ないっ、ないってばよ!」
ブンブンとナルトは大きく首を横に振った。
会ったことはない。だがその名前はファンレターで何度も見た。
これまで団扇サスケから届いたファンレターは数十、百通に達するぐらいの勢いだ。
初期の頃から送り続けられ、最初はTVやラジオの雑誌まで網羅した内容の細かさが気持ち悪かったが、ただ可愛いと誉め立てるだけでなく、中にはダメ出しもあり、
悔しいけどそれは的を射ており、その通りにしたら仕事もやりやすくなり、仕事が楽しくなったきっかけでもあった。
「ど、どんな字書くの?」
「ん?うちはは団扇で、サスケはカタカナだ」
「い、いやあ~俺も名前カタカナなんだってば。音的に一緒かなあって……アハハッ奇遇だってばね」
まちがいない。あの団扇君だ。なんか名前の最後にうちわマーク書く人だ。
予想していたよりその……まともと言ったら変だけど、イメージ的にはもっと年をとっていて、もっとオタクらしいと思ってた。
いや、部屋からすると間違いなくオタクなんだけどさ。
「渦巻…はちょっと言いずらいな、ミナトって呼んでいいか?」
「あ、じゃあ俺もサスケって呼んでいいってば?」
おお、とサスケは大きく頷いた。
「なあミナト。ところでお前って仕事は何してんの?」
「え、えっと……」
アイドルです。
なんて言えねえー!だとすると何て言えば?えーとえーと…………。
「別に言いたくなきゃいいぜ?」
「あ、あの………その、う、売れてないタレント、とか?」
実際正体隠してるし。他の仕事だと偽っても上手く嘘をつけそうにないのでそう答えると、サスケは「マジかよ!スゲーな!」と目を見開いて驚いていた。
「あ、あのホントにホントに下で全然TVとか出てないし!」
「それでもスゲーよ。お前頑張ってんだな。そっかーだから居酒屋で俺を「贅沢だ」と慰めたんだな」
ん?そんなこと言ったっけ?
「お前いい奴だけど、ちょっと派手さには欠けるもんな」
「…………」
確かにNARUTOの時はフルメイクだけど、そういう言い方されるとなんかムカツクってばよ。
地味顔って言いたいのかよ?そりゃあサスケに比べれば地味な方だけどよ。
「あ、怒ったか?でも人間顔じゃねえぜ?お前の魅力ってなんつーか、そういう親しみやすいとこがウリだと思う」
「その後『芸能人オーラは出てねえけどな』とか言うつもりだろ」
マネージャーにも「ナルトはメイク落とすと絶対バレそうにないね。だってオーラが消えるもん」って言われたし。
「え?なんでわかった?ってウソウソ……ハハッ、お前のそういう所がまたいいんだと思うぜ」
近くにあったクッションを振り掲げると、サスケは降参とばかりに両手を軽く上げてケラケラと笑った。
「な、明日は出かけるのは早いのか?」
「いや、そうでもないけど……お前こそ仕事だろ?」
「まあな。悪いけどもう休むな。お前はそこのベッド使えばいいから」
「は?いやオレ床でいいってばよ!」
「いーって、愚痴聞いてくれた礼。と、友達記念日だ。初日だけ貸してやる。次からは床だ」
「…………」
友達。
なんていい響きなんだろう。
友達。男友達!最高だ!
NARUTO (俺)オタクなのはちょっとひっかかるけど、芸能人になってから初めてできた男友達だってばよ!
いや、NARUTOの男友達もいなくはないんだけど、アレは俺であって俺じゃないしなあ。
「あ、どうしても気になるんだったら、今度なっちのライヴを……」
「断る」
「ちぇ、お前もなっちのことよく知ったら行きたがるに決まってる。覚悟しとけよ」
行きたがるも何も、ライヴの時は観客席じゃなくてステージだってばよ。
サスケは寝る直前までブツブツと「なっちのここがいい。あれがいい」と話しかけてきたが、全部無視した。
翌朝はサスケに起こされ、彼が用意した朝食を一緒に頂き、連絡先も交換して別れた。
それからTVやラジオの出演の度、サスケからはメールが来るようになった。
もちろんNARUTOに関してだけではないが、やはりこれに対しての割合が大きい。
もしかして正体がバレてるのではないかと不安になったが、ファンレターの量は変わらずで、自分(ミナト)宛てのメールとNARUTO宛ての手紙を見比べて見て、ちょっと笑ったりしてしまった。
NARUTO宛ての手紙はやけに丁寧語だからな。
今日もさっそくNARUTOが出演した番組を見た感想メールが来た。
『なっちが後輩のサイって奴と仲いいみたいでムカツク!俺だってなっちとご飯食べに行きてぇ!(>皿<)』
「じゃあサスケ、芸能人になればいいってばよ」
『俺があんな交流が多い中に入っていけると思うか?』
『思わない(笑)で、なっちのお勧めの店にでも行きたいってば?』
『うん。時間いつとれそうだ?』
『今週なら夜いけそうだってばよ』
「土曜とかいけるか?」
「行けるってばよ」
「よし」
サスケとのメールのやりとりを終え、パチンと携帯を閉じるとタイミングを見計らっていたのか、すぐサイが話しかけてきた。
「ナルト、メール終わった?」
「ああ、いいってばよ」
「あのさ、今度の土曜の収録の後、何もなかったらご飯でもどう?」
「え…あー、ごめん先約入っちゃったてばよ」
「へー、彼氏?」
「…………はあ?」
「まだお友達?」
「…………あのさ、前にも行ったけどオレってば仕事でこういう格好してるだけであって、そういう趣味はねえってばよ」
「そうなの?それは残念だなあ」
「…………」
サイは俺の正体を知ってる数少ない内の一人だ。
同じ事務所の後輩で、うちの事務所は男性タレントも少ないということで、フォローしてやってくれと頼まれたため。
見た目はサスケにちょっと似てて整ってるけど、変な奴だってばよ。
で、NARUTOがTV出演時におススメだと行った店にサスケと向かうわけですね。
そんでNARUTOが特におススメなのがスイーツで、サスケは甘いものが苦手だからナルトに食べてもらおうと思ってたんだけど、
ナルトは「なっち好きなら食べるってばよ」とサスケをからかう。
ナルトの押しに負けて、涙目で一口食べるサスケにナルト爆笑。
そこでサスケが甘いもの苦手なのは、兄が超甘党で昔から付き合わされて食べれなくなったとかを聞く。
そこから少し家族の話になって、ナルトは初めて自分から、孤児だということを話す。
同情されるのは嫌なはずだったのに、サスケには「お前頑張ってるんだな。偉いな」と言われて胸が温かくなるナルト。
その店、もしくは道中でばったりサイと会う。
仕事のことを話されては困るのに、サイは勝手に仕事仲間なんて言うし、
隠そうと慌てるナルトの態度に、サスケは不機嫌になる。
サイが立ち去った後フォローするが、上手くいかない。
「別にお前と俺まだ付き合い浅いしさ……たださっきの奴が気に食わないだけでお前に怒ってない」
「ん・・・ごめんってばよ」
全部話せなくてごめん。お前がNARUTOファンじゃなければまだ話しやすいんだけどさ。
でもサスケはなっち熱は加熱していくばかりで、
「チケット取れたから一緒に行こう」と誘われ、当然断るしかないナルト。
だけどライブ当日、ふと視線を巡らせれば最前列にサスケの姿があったり。
こんなに近くで見られたらさすがに正体がばれると思ったけど、やっぱりばれなかったり。
サスケはひたすら「なっち、なっち」で………。
そもそもサスケがなんでNARUTOが好きかって言うと、
容姿が可愛いのもあるけど、なっちがいつも笑顔で頑張ってるのが励みになっているらしい。
「彼女は俺の希望そのものだ」
キラキラと輝く瞳で答えるサスケに、じわじわと胸が痛くなるナルト。
最初はただの罪悪感だと思っていたけど、NARUTOへ向ける笑顔は自分に向けるよりも眩しいので……。
「(俺だってがんばってるもん)」と、ナルトはサスケに自分を見てほしいと思うようになってきた。
サスケはナルトの仕事を知らない分、ただ大変だなと気遣ってくれる。
バレない程度に話はするが………もっと話したい、打ち明けたい。だが打ち明けたらサスケの夢を壊すし嫌われるかもしれない。
サスケに嫌われたくない。
気がつけばサスケことばかり考えていて胸が苦しい。
ナルトはNARUTOに嫉妬していた。
日に日に元気をなくしていくナルト。
そんなナルトを心配するサスケ。その気遣いがまたナルトの胸を締め付ける。
NARUTOの時は、せめてサスケに喜んでほしいと仕事を頑張っているが………サスケはNARUTOへのファンレターにも「元気ないですよね?」と気遣う内容。
2重に苦しいナルト。
それでもどうにか忘れようと気持ちを抑えるナルトだったが……。
ある日、自分のライブチケットをサスケの為に用意して渡すが、サスケは「お前と一緒じゃなきゃつまんねーよ」と拗ねる。
「どうにか予定つけろ」とねだるサスケに、ナルトは「努力する」とだけ言う。
当然一緒に行けるわけもなく、当日「やっぱり行けそうにない」とメールすれば「仕事終わったらメールしろ。待ってるから」と返信が。
ナルトはそれは、「ライブ後待ってる」という意味だと思ったら、客席にはサスケの姿がなくて…………。
もしかしてこれって俺が来るまで待ってるっていう意味だったのか!?
ライブ後打ち上げにも出ず、慌ててサスケの元へとかけつけるナルト。
「バカ!行けないって言ったのに何待ってたんだよ!!」
「俺だってお前と一緒じゃなきゃつまんねーって言った。大体お前から貰ったチケットだしな。悪いと思ってるなら次から一緒しろ」
「…………」
「仕事大変だっていうのはわかるけどさ……。なんつーかお前にもなっち好きになって欲しいしさ。嫌いじゃねえだろうけど…いや、そうじゃなくてなんつーかお前元気ないし、お前に何したら喜ぶかわかんねえけど、たまにははしゃいだっていいじゃねえか」
「…………」
NARUTOなんか大嫌いだと言ってやろうか。
俺なんかの為に大好きなNARUTOより俺を選んでくれて、そんな友情に厚いお前も俺は大嫌いだ。
大嫌いで……大好きだ。
「サスケェ……………………俺ってば、お前のことすき、だってば」
「ハハ、おーげさだなあ」
「そうじゃなくて……」
「………………………………え?」
サスケの服の裾をぎゅうとつまんで、真っ赤になったナルトを見て、サスケもようやく気付く。
数秒の沈黙がナルトには何時間にも感じた。
「……………………ちょ、いきなり言われても…………その、ちょっと考えさせてくれ」
「…………ごめん」
すっとサスケの服から手を放すナルト。
泣いたらサスケが困るだろうと思うのに、ずびずびと涙も鼻水も止まらない。
それもサスケがハンカチを渡してくれる。
「洗って返せよ」
「…………」
また会っていいのだろうか…………いや、サスケの家知ってるからいざとなれば郵送できるや。
「ごめん」とナルトはまた謝って、サスケに背を向けて、立ち去った。
それから数日間連絡は途絶えます。
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